『第10回CVG中国』表彰式を開催しました!
平成24年1月17日(火),リーガロイヤルホテル広島において,第10回キャンパスベンチャーグランプリ中国の表彰式を開催しました。
キャンパスベンチャーグランプリ(以下,CVG)中国は,中国地域の大学・高専等の学生を対象に,起業家精神を醸成し,創造性・チャレンジ精神に富んだ人材を育成することを目的として,新事業・商品のアイデアやビジネスプランを応募・顕彰するコンテストで,今年で10周年を迎えました。
CVG中国実行委員会の構成メンバーであるコラボレーションセンターより,当日の開催概要についてご紹介いたします。
◆主催者挨拶・表彰
主催者を代表して,CVG中国実行委員長の山下中国経済連合会会長から,「今回は参加校(25校)・応募件数(170件)とも過去最高を記録し,CVG中国の取り組みが広く地域に浸透しつつあると感じている。閉塞感が漂う現状を打破する原動力は,創造性・チャレンジ精神が生み出すイノベーションである。その礎となるべく引き続き活動の充実に努めていきたい。」と挨拶がありました。また,日刊工業新聞社の曽根取締役(西日本担当)からは,「過去の受賞プラン(136件)のうち,実に1割以上が起業・商品化に至っている。今回蒔かれた種も,それぞれ大輪の花を咲かせることができるよう,添え木となって支えていきたい。また,引き続き学園(キャンパス)と社会をつなぐ触媒としての機能を果たせるように,CVG中国を更に発展させるべく努力していきたい。」との挨拶がありました。
その後,審査委員の紹介に続き,16件の受賞プランの提案者に対して,それぞれ賞状と副賞が授与されました。
⇒今回の受賞プラン・提案者の詳細につきましては,「受賞者一覧」をご参照下さい。
(左から,山下会長,曽根取締役,表彰式の様子)
◆講評・講話
各賞の表彰に続いて,審査委員長の茂里広島県発明協会会長から講評・講話をいただきました。
茂里会長にとっては,今回が初めての審査となったわけですが,「キャンパス」(若者らしさ,知的な工夫,仲間の存在),「ベンチャー」(挑戦,新規性,事業化の可能性),「グランプリ」(夢,気品)の要素をなるべく多く満たし,特徴のあるプランを選ぶよう努めたとのことです。
また,プランを提案するにあたっては,@ビジネスモデル・スキームがしっかりしていること,A限られた用紙・時間の中で,提案内容が明確であること,B具体的であること,の3点が最も重要であるとアドバイスをいただきました。具体性については,現状を数値化するだけでなく,プランが実現したらどうなるのか,今ある知識を最大限に活用して数値を予測し,作り上げる努力が大切であり,評価のポイントになるとのことでした。
そして最後に,「20周年を迎える際には,記念誌の起業・事業化一覧表に今回の受賞者全員の名前が載るよう,それぞれの場で知性を磨き,プランの実現に向けて努力して欲しい!」とエールを送られました。
◆最優秀賞プレゼンテーション
表彰式の最後には,各部門の最優秀賞に輝いた2件のプランについて,それぞれ提案者によるプレゼンテーションが行われました。
<テクノロジー部門最優秀賞>
「誰にも持っていかれない安心傘」 徳山工業高等専門学校 黒田 浩晟さん
傘の盗難防止策としては,ダイヤル式のロックを設ける方法がありますが,構造が複雑・高価で,開錠も面倒です。また,柄の部分を取り外すだけでは,盗難の危険性が残ってしまいます。黒田さんは,これらの先行事例が実用化に至っていない原因を分析し,市場のニーズは「安価で使いやすく,防犯能力が高い傘」にあると考え,傘の柄の部分を本体から取り外すと同時に,「はじき」という部品が固定されて開閉できなくなる「安心傘」を発案されました。柄の部分と本体の軸に,鍵と錠の機構を設け,一致する柄を差し込んだ時にしか傘を開閉できなくなるという仕組みで,現在,サンプル品を作成して機能を確認している段階とのことです。
黒田さんは,傘の製造メーカーから本体を仕入れ,錠と柄の部分を自分たちで製作するというスキームで,本プランの実現を目指しておられます。傘の消費量は日本だけでも年間約1億3千万本,雨傘だけでなく日傘もあり,近年は壊れにくい傘・高級品の傘など,盗難防止に対する意識も高まりつつあるため,需要は十分見込めるとのことでした。
受賞後のスピーチでは,「3年前に発案した時は,アイデア止まりで先に進むことができませんでしたが,このような機会を与えていただき,大きな一歩を踏み出せたことに感謝しています。皆様に安心して傘を持ち歩いていただけるよう,一刻も早い商品化に向けて努力していきたいと思います。」と,今後の抱負を力強く語っておられました。
<ビジネス部門最優秀賞>
「アジア医療へ つながるいのち つなぐ3点」 鳥取大学 楊 振楠さん,三井 庸平さん,増田 泰之さん
高度な医療と観光をパッケージ化して提供する「メディカルツーリズム」は,日本でも,既に東京・北海道・長崎・徳島などで,医療機関と旅行代理店が連携して行う動きが見られつつありますが,いずれも十分な収益はまだ得られていません。その原因として,楊さんたちは,医療機関側には感染症,マナー,検診結果の取り扱い,疾患を発見した時の指導などに対する懸念があり,一方,旅行代理店側には現地での圧倒的な広告不足という致命的な問題点があると分析し,その解決策として,中国の保険企業と提携した新たなビジネスモデルを発案されました。中国では,保険企業が医療の一部を担っているため,医療機関の懸念を払拭できるうえ,増加の一途をたどる新規加入者へアピールすることで,広告不足にも対処できます。一方,保険企業にとっても,日本の高度な医療を提供することで,将来的な医療費の増加を抑制できるメリットがあるという仕組みです。
楊さんたちは,この3点(医療機関,旅行代理店,中国の保険企業)を結びつけるため,既に関係機関と具体的な調整・交渉を進めておられます。また,観光による収入増も考慮し,中国の富裕層に対し,高度な医療を旅行のオプションとして安価に提供する取り組みについても,新たに提唱していきたいとのことでした。
受賞後は,「これまで支えていただいた皆様,ご期待いただいた審査員の皆様への感謝の気持ちで一杯です。この気持ちを社会に還元することで恩返ししたいと思います。」とのスピーチがありました。
◆記念講演会
「社員教育について」 広島管財株式会社 代表取締役社長 川妻 利絵 氏
表彰式に続いて,広島管財(株)の川妻社長をお招きして記念講演会が行われました。
川妻社長は,前社長の突然の辞任を受けて専業主婦から経営者となり,子育ての経験を活かした社員教育に特に力を注いでこられました。そのきっかけとなったのは,就任直後,ボーナスの減額に抗議して包丁の刃を向けてきたある社員に対し,たった一言「そんなに腹がたったんだね。」と声をかけたところ,その社員の態度が一変し,以降スムーズにコミュニケーションをとれるようになった出来事でした。社員教育は子育てと同じであり,現場で社員の声に耳を傾け,心の声を聞き,一緒に泣いて一緒に笑っていこうという思いを強くしたそうです。
その後,「ありがとう経営(松下幸之助)」に出会い,研修会,ありがとう作文,日報へのコメント,ありがとう作文などの様々な場面・方法で,社員に感謝の気持ちを伝えるよう努めておられます。「ありがとう」という言葉には不思議な力があり,自分から意識して言い続けているうちに,周りが自然と明るくなり,コミュニケーションも向上するそうです。また,社員は宝(人財)であり,できるだけ長く仕事をしてもらうためには,家族の理解と応援が不可欠との思いから,入社前の家庭訪問や入社式への母親の招待など,女性・母親ならではのユニークな取り組みも進めておられます。
川妻社長が常日頃心がけておられるのは,お客様,一緒に働く会社の仲間,そして家族・自分自身に「ありがとう」と感謝すること,そして,父親である前社長からの言葉「1万メートル上空から物事を見る」ことだそうです。視野を広くすることで必ず道は開ける!というエールをいただき,講演は終了となりました。
◆受賞祝賀会(2012年中国四国産業人クラブ春の交流会)
記念講演会の後は,「第10回CVG中国受賞祝賀会&2012年中国四国産業人クラブ春の交流会」が盛大に行われました。祝賀・交流会には,CVG中国の各賞を受賞した学生の皆さんにも多数ご参加いただき,いつもの産学官イベントとは異なる華やいだ雰囲気の中,会場の至る所で活発な情報交換が行われていました。この交流が,学生さんと関連企業・支援機関等との出会いのきっかけとなり,ビジネスプランの実現につながることを期待しております。
(中国経済連合会 桑原)