コラボレーションセンター活動レポート

インテレクチャル・カフェ広島』を開催しました!

 中国地域産学官コラボレーション会議では,平成23年8月25日(木),ひろしまハイビル21において,今年度第1回目となる『インテレクチャル・カフェ広島』を開催しました。
 インテレクチャル・カフェ広島は,大学の若手研究者と産業界・金融機関・行政等が交流し,新技術・新製品の開発や新事業を生み出すネットワークを形成することを目的とした交流会です。これまで,各大学(広島大学,広島市立大学,広島工業大学,県立広島大学,近畿大学工学部)ごとに持ち回りで開催してきましたが,今年度は,複数の大学で共通のテーマを設定して共同開催することとし,今回は,「ロボット・RTの活用」をテーマに,広島大学・近畿大学工学部・広島市立大学の3大学共催で開催しました。
 コラボレーション会議の事務局を務めるコラボレーションセンターより,当日の開催概要についてご紹介いたします。

 当日は,連日の猛暑にもかかわらず130名近い多くの方々にご参加いただき,幹事校を務めていただいた広島市立大学の若林副学長の開会挨拶に続いて,3名の先生方から話題提供として,それぞれ取り組んでおられる研究の概要についてご紹介いただきました。

◆話題提供@ 「進化・学習に基づくマルチロボットシステムの知能化」
   広島大学 工学研究院 助教 保田 俊行 氏 

 まず最初に,広島大学の保田先生から,複数のロボットを協調させることによって,単体よりも高度なタスクを実行することが可能になる「マルチロボットシステム」についてご紹介いただきました。
 一般的なマルチロボットシステムでは,特定のタスクを効率的に実行するため,個々のロボットに対し,あらかじめ事細かに役割・動作等を与えておく必要があります。例えば,重量・サイズの異なる複数の荷物を運搬する場合,各ロボットが運搬する荷物・配置等について,人間が事前に検討・設定しておかなくてはなりません。これに対して,保田先生は,同じ構造・機能を持った複数のロボットに対し,システムを詳細にモデル化して基本ルール等を事前に与えなくても,個々のロボットが,周囲の環境や他のロボットとの相互作用から自身の役割・動作等を自律的に学習・進化し,互いに協調してタスクを実行できるようになるシステムを目指して研究を進めておられます。
 このようなシステムでは,個々のロボットが,状況に応じて自律的にその役割・動作等を変更できるため,タスク内容の変更や環境の変化等への柔軟な対応が可能になるうえ,ロボットが数台故障しても他のロボットで容易に補完できるため,頑健性の高いシステムが実現できるそうです。また,将来的にはロボット間だけでなく,人間・機械協調系への応用を目指しておられるとのことでした。
<マルチロボットシステムの適用例>

(ある台数以上で押さなければ運べない荷物に対して,始めはほとんど何もできないが,やがて適切なサイズのサブグループを形成してゴールラインまで運べるようになる。)

◆話題提供A 「生活支援向け移動ロボットとその運動制御」
   近畿大学工学部 知能機械工学科 講師 友國 伸保 氏 

 続いて,近畿大学工学部の友國先生からは,生活シーンにおいて人間や家具の移動を補助するロボットについてご紹介いただきました。
 従来の車いすには,段差に引っかかる,傾斜に弱い,専有面積が大きく狭い場所での移動が困難等の問題点があります。そこで,友國先生は,倒立二輪移動機構を採用することで,これらの弱点を克服する移動補助ロボット(PMR:Personal Mobility Robot)の開発に携わっておられます。PMRは,車いすと同様,人が座った状態での移動を補助するものであり,走行中の姿勢の変化をセンサで検出し,それに応じて車輪の高さ・角度等を調整することで,常にバランスを取りながら安定的に走行することが可能になるとのことです。
 友國先生は,屋内での家具の自動移動を実現する電動キャスタ(AC:Active Caster)の開発にも取り組んでおられます。個々のACは,双輪型キャスターを電動化したもので,それぞれ全方位に移動させることが可能ですが,無線ユニットが内蔵されており,複数のAC間で通信を行って,互いの位置・動作等を認識しながら連動することによって,家具を目的の位置に自由に移動させることが可能になるとのことです。


◆話題提供B 「夢を運ぶ近未来のロボットサービス」
   広島市立大学 情報科学研究科 教授 岩城 敏 氏

 最後に,幹事校を務めていただいた広島市立大学の岩城先生から,ロボティクス研究室において現在研究を進めている様々なロボット技術についてご紹介いただきました。
 今回ご紹介いただいた技術は,枕の空気圧を調整することで好みの高さ・感触に調整することが可能な『枕』,PowerPoint(スライドショー)の効果音と連携してロボットがプレゼンをしてくれる『音』,人間が必要とする画像・映像を移動しながら家具・電気製品・壁等に投影してくれる『亀』など,いずれもユニークで夢のあるものばかりでしたが,ギターの音に反応してロボットが踊る『弦』という技術が最も印象的でした。
 『弦』は,単純に音の大小や高低に応じて動作パターンを変えるのではなく,チョーキング・スライド等の特殊奏法にも反応するなど,プレーヤーの感情を反映した踊りを見せてくれるロボットです。(岩城先生いわく,その反応がさらにプレーヤーの感情を刺激する双方向のセッション型ロボットだそうです。)岩城先生は,このようなロボットに代表される「実体の動き(モーション)」を,テキスト,音,画像,映像に次ぐ第5のメディア(モーションメディア)と捉え,それを伝えるための手段(入出力端末)として,ロボット技術の研究に取り組んでおられるとのことでした。

◆交流会

 話題提供の後,中国経済連合会の山下会長の乾杯挨拶に続いて,軽食と飲み物による立食形式の交流会が行われました。今回は,中国経済産業局の井辺局長,産業技術総合研究所中国センターの中村所長をはじめ,各機関のトップの方々にも多くご参加いただき,会場の至るところで活発な意見交換が行われました。

(中国経済連合会 桑原)