コラボレーションセンター活動レポート

CVG中国10周年記念シンポジウム』を開催しました!

 平成23年8月29日(月),県立広島大学の広島キャンパスにおいて,『キャンパスベンチャーグランプリ中国10周年記念シンポジウム』を開催し,大学の学生・教員を中心に約80名の方々にご参加いただきました。
 キャンパスベンチャーグランプリ(以下,CVG)中国は,中国地域の大学・高専等の学生を対象に,新事業・商品のアイデア,ビジネスプランを応募・顕彰するコンテストです。今年で10周年を迎えることを記念し,起業家精神の醸成と創造性・チャレンジ精神に富んだ人材の育成に繋げることを目的として,本シンポジウムを開催いたしました。
 CVG中国実行委員会の構成メンバーとして本シンポジウムを企画したコラボレーションセンターより,当日の開催概要についてご紹介いたします。

◆開会挨拶

 当日は,今年度からCVG中国の審査委員長を務めていただく広島県発明協会の茂里一紘会長(前の広島工業大学学長)から,開会のご挨拶をいただきました。挨拶の中で,茂里会長は,CVG中国が担う役割として,「新しいことに挑戦する,それに伴う多少の失敗は大目に見て育てていく,そういう風土を中国地域に醸成していく必要がある。」と述べられました。

◆講演@ 「ベンチャー・起業に今必要なもの 〜私の体験的ベンチャー論〜」(株)ソアラサービス 代表取締役社長 牛来 千鶴 氏 

 専業主婦・パート社員の時代を経て12年前に起業され,現在はCVG中国の審査員も務めていただいている牛来社長からは,ご自身の経験を踏まえて,起業に必要なものは何かについてご講演いただきました。
 牛来社長が起業された時は,お金・物・情報・人脈等は何もなく,小さなビルの1フロアを共同で間借りし,机・椅子や事務用品は全て中古品を調達,パーテーション等足りないものは手作りし,ほとんどお金をかけずに事業をスタートされたそうです。起業したくてもなかなか一歩を踏み出せない人が多い中で,「やろうと思えば何でもできる。○○だからできないではなく,自分がやりたいことを実現するにはどうしたらよいかを考え,知恵を絞り,小さくてもできることからスタートすることが大切。」との言葉には,大変説得力がありました。
 起業家にとって一番必要なものは「志(夢やビジョン)」。人間は自分がイメージした以上のものにはなれないので,10年後の自分をできるだけ明確にイメージしながら,夢は大きく描き,少しでもそれに近づくよう努力していくことが重要だそうです。自分のやりたいことが見つからず,夢を描けない人も多いと思いますが,「じっとしていては何も始まらない。チャンスのタイミングは“ひょん”なところに転がっているので,好きなことや興味があることなど,自分のアンテナに引っかかることなら何でもいいので,できることから始めてみることが大切。そして夢を描いて欲しい。」と,牛来社長はおっしゃっておられました。

◆講演A 「大学発ベンチャー設立を振り返って今想うことと今後の挑戦!」(株)クレオフーガ 代表取締役社長 西尾 周一郎 氏 

 4年前に第6回CVG中国の「グランプリ(中国経済連合会会長賞)」を見事受賞し,その年に起業された西尾社長からは,起業から現在までの経緯や,起業にとって大切なもの等についてご講演いただきました。
 西尾社長は,学生時代,岡山県学生スキー連盟事務局長として,組織のトップに立って物事を進めることに充実感・やりがいを感じ,それが起業に興味を持つきっかけになったそうです。また,趣味で立ち上げた個人のサイトに広告を掲載して収入を得た際,自分が作ったものでお金が得られることに衝撃を受け,収入を増やす努力を続けていくにつれて,実際に起業することを考えるようになったとのことです。
 その後,CVG中国のグランプリを受賞されましたが,公式の場で評価されたことで自信が持てるようになっただけでなく,事業計画書の作成等を通して事業を見つめ直すことができたこと,そして,人前で自分のやりたいことを伝えるプレゼンの経験を積むことができたことも大きな収穫だったと振り返っておられました。
 今年で4期目,その間様々な苦難があったそうですが,「ようやく視界が開け,自分がやりたいことを明確に位置付けられるようになってきたので,これから結果を出していきたい!」と力強く語っておられました。そして,これから起業する人に対し,「個人・自社でできることは限られているので,自らの強みを明確にするとともに,足りない部分を補完してくれるパートナーと共に歩むことが必要であり,そのためにも自分が何をやりたいかというビジョンを明確に描くことが大切。」とのアドバイスをいただきました。

◆トークセッション
   テーマ 「ベンチャー創出・起業および人材育成に関する現状の課題と今後の取り組み」

 シンポジウムの後半は,広島県内の各大学で,CVG中国への参加,地域連携,ベンチャー創出等に対して積極的に取り組んでおられる先生方をお招きし,今後のベンチャー育成・アントレプレナーシップ(起業家精神)教育にどう取り組んでいくべきかを考えるセッションを行っていただきました。

【コーディネータ】
  県立広島大学 広島地域連携センター長 准教授 粟島 浩二 氏
【パネラー】
  広島大学 産学・地域連携センター 新産業創出・教育部門 部門長・教授 三枝 省三 氏
  福山大学 経済学部 准教授 小林 正和 氏
  広島修道大学 商学部 商学科 准教授 柏木 信一 氏
  安田女子大学 現代ビジネス学部 現代ビジネス学科 准教授 松藤 賢二郎 氏
  近畿大学工学部・次世代基盤技術研究所 社会連携センター 准教授 片岡 隆之 氏

 セッションでは,各先生方からそれぞれの取り組みについて順番にご紹介いただき,その後,コーディネータを務めていただいた粟島先生を中心に共通項をピックアップし,今後の方向性を整理していただきました。その結果,学生・教員のマインドを高めること,ビジネススキルや企画・構想力を向上させるための教育プログラムを充実させることが今後の大学教育における課題であるが,それに加えて,他の大学や地域社会との情報の共有化・ネットワーク作りが重要になってくるのではないか,という結論に達しました。学生が,実際に起業した人や地元の人など,多様な人の多様な考え方を学べる場・機会を提供するための仕組み,そしてそれを実現するための「緩やかなネットワーク」が必要ではないかということです。
 セッションの最後には,粟島先生から,「今回のセッションで,初めて各先生方とお会いし,共通する悩み・課題があることが認識できたので,ここからスタートを切っていきたい。ただ,各大学の取り組みだけでは限界があるので,CVG中国の企画そのものが,緩やかな連携・ネットワーク作りの基軸となり,大学がまとまるための受け皿の役割を担っていただきたい。」と,CVG中国に対する期待が述べられました。

 その後,日刊工業新聞・大阪支社の久保薗部長から,9月からプランの応募を開始する「第10回CVG中国」について簡単な紹介があり,中国経済連合会の都留理事の閉会挨拶で,シンポジウムは盛況のうちに終了となりました。

 今回のシンポジウムは,CVG中国実行委員会としても初めての試みであり,いろいろと不手際もあって30分近く時間をオーバーしてしまいましたが,学生さんを始め多くの方々に最後まで熱心に耳を傾けていただいて,大変嬉しく思っております。今回のシンポジウムをきっかけとして,緩やかなネットワーク作り・交流の場の提供等に繋げていけるよう,事務局としても精一杯ご協力させていただきたいと考えております。
 最後になりましたが,県立広島大学の粟島先生には,シンポジウムの企画段階からご参加いただき,事前の準備を含めて大変ご尽力いただきました。この場をお借りして,あらためて感謝申し上げます。

(中国経済連合会 桑原)