コラボレーションセンター活動レポート

インテレクチャル・カフェ広島(平成24年度第1回)』を開催しました!

 中国地域産学官コラボレーション会議では,平成24年8月30日(木),ひろしまハイビル21において,今年度第1回目となる『インテレクチャル・カフェ広島』を開催しました。
 インテレクチャル・カフェ広島は,大学の若手研究者と産業界・金融機関・行政等が交流し,新技術・新製品の開発や新事業を生み出すネットワークを形成することを目的とした交流会で,今年で5年目となります。今年度は,年間の共通テーマを「医療・健康関連分野」とし,第1回目となる今回は,広島市立大学,広島工業大学,広島大学(幹事)の3大学共催で開催し,「新たな医療機器の開発に向けて」をテーマに3名の先生方に話題提供を行っていただきました。
 コラボレーションセンターより,当日の開催概要についてご紹介いたします。

◆開会挨拶
   広島大学 理事・副学長(社会産学連携・広報・情報担当)  岡本 哲治 氏

 当日は,広島大学の岡本理事・副学長の開会挨拶でスタートしました。岡本副学長からは,「最近,ゲノム解析の分野で目覚しい成果の発表が相次いでおり,注目されている。この分野の研究が飛躍的に進展してきた背景には,ゲノム解析に用いるシークエンサーの技術開発が大きく進展し,従来とは比較にならない位に短期間・低コストでゲノム解析が可能になったことがある。シークエンサーの開発は医工連携の例の一つであるが,当地域でも医工連携の取り組みを加速し,共同研究の中から新たな医療機器の開発につながることを期待している。」と挨拶がありました。

◆話題提供@ 「自然落下式輸液監視システム」
   広島工業大学 生命学部 生体医工学科 准教授  槇 弘倫 氏

 槇先生からは,輸液切れと点滴速度を同時に監視できる装置の開発と実用化についてご紹介いただきました。
 輸液治療において輸液状態の監視を行う項目としては,輸液切れ,投与中断,輸液速度がありますが,人手で監視を行うのは多大な労力を要し,人為的な監視ミスの懸念もあります。そこで,従来から機械的な監視システムが考案されてきましたが,輸液切れの判断と輸液速度のモニタリングの両方を行えるシステムは存在しませんでした。
 槇先生の研究により,輸液チューブと輸液筒の両方に電極を付け,電気インピーダンスを測定することで,輸液中断と輸液切れの区別および輸液速度のモニタリングが可能であることが確認されました。本システムは,医療事故を未然に防ぎ,医師や看護師の負担を軽減させるシステムの構築への応用が期待されます。

◆話題提供A 「血管粘弾性インデックスに基づく医工連携/産学連携研究の展開」
   広島大学大学院 工学研究院 教授  辻 敏夫 氏 

 辻先生からは,血管粘弾性インデックスを用いた多汗症手術のモニタリング法,および動脈硬化の予防を目的とした血管内皮機能評価法の開発と実用化についてご紹介いただきました。
 従来,多汗症手術の成功・失敗は術後の発汗状態で判断するほかなく,交感神経遮断がうまくできていなかった場合は,再手術の可能性がありました。
 辻先生の研究によって,拍動を利用して血管壁インピーダンス,血管径,動脈血圧を計測することで,血管のダイナミックな硬さ変化を示す指標(=血管粘弾性インデックス)を計測するシステムを開発したことにより,手術中に血管の拡張・収縮の状態を識別できるようになりました。この結果,交感神経遮断が確実にできているかどうか手術中に確認でき,再手術のリスクが回避できるようになったとのことです。
 もう一件の話題は,血管内皮機能障害を早期に発見し,動脈硬化の予防を効果的に行うシステムについてでした。従来の血管径を直接に超音波装置で計測する方法には,被験者の血圧に依存する,検査者の習熟が必要という問題点がありました。これに対して,辻先生が開発したカフ脈波を計測することで血管内皮機能を評価するシステムでは,高価な超音波装置を用いることなく,被験者の血圧に依存せずに,しかも血管径を直接に計測する方法と同等以上の精度で簡単に計測できるとのことです。

◆話題提供B 「感覚と運動の統合に関連した脳電位の計測」
   広島市立大学大学院 情報科学研究科 准教授  福田 浩士 氏

 福田先生からは,人間の大脳皮質における感覚と運動を統合する機能に関連した脳電位についてご紹介いただきました。
 人間は生活環境における様々な情報を,視覚,聴覚,体性感覚といった感覚系で検出・処理し,その結果に基づいて運動を計画・実行していますが,そのためには,脳において感覚と運動に関する情報がうまく統合されなければなりません。
 ヒトの感覚−運動統合は大脳皮質の頭頂連合野が担っています。停止信号課題(=随意運動における反応行動を,停止信号に対応して抑制できたか否かという課題)における脳電位を見てみると,感覚運動統合に関連する頭頂連合野と停止信号に用いた刺激を処理する領野の活動を示す電位が計測できます。
 こうした脳の情報処理メカニズムの解明を進めて行くと,新しいリハビリテーションシステムの創出や新しいブレイン−コンピュータ・インタフェースの創出が期待できるとのことです。

◆交流会

 話題提供の後,中国経済連合会の山下会長の乾杯挨拶に続いて,軽食と飲み物による立食形式の交流会が行われ,中国経済産業局の井辺局長の中締めで終了するまでの間,会場の至るところで活発な情報交換が行われていました。

      

(中国経済連合会 小泉)