コラボレーションセンター活動レポート

中国地域国立5大学連携事業
『化学分野における大学研究シーズ説明会』を開催しました!(H24.11.16)

 平成24年11月16日(金),岡山大学において,中国地域国立5大学連携事業「化学分野における大学研究シーズ説明会」第1回を開催しました。当日は,5大学の研究者・コーディネーター,中国地域の化学関連企業の研究者など55名の出席のもと,経済産業省の山崎知巳氏および宇部興産株式会社の柏木公一氏による基調講演に続き,広島大学から2件,岡山大学から3件の研究シーズを紹介していただきました。以下に内容を簡単にご紹介いたします。

<基調講演@>機能性化学品の技術開発動向と経済産業省の関連施策
  (講師)経済産業省 製造産業局化学課 機能性化学品室長   山崎 知巳 氏

◆化学産業の課題と方向性
 これまで,機能性化学品産業は,日本のユーザーの声に対応する形で技術力を磨き,世界で高いシェアを獲得してきたが,市場の拡大とともに徐々に中国・韓国勢にシェアを奪われつつあり,競争力の維持・強化が課題となっている。国際競争で負けないためには,研究開発力で他国より一歩リードし続けることに加え,海外進出の際に技術流出の防止対策をしっかり行う必要がある。
 機能性化学品が高い競争力を持つ,情報や電池分野等の成長分野で世界において勝ち残っていくためには,素材メーカー単体で競争力を獲得する手法のみならず,ユーザーメーカーとの垂直連携や関係部素材間の水平連携の促進を進めることが必要である。

◆グリーンイノベーションの推進
 昨年,わが国の科学技術振興の基本方針として策定された第四期科学技術基本計画ではグリーンイノベーションの推進が大きな柱の一つとして掲げられ,化学技術は化学品原料から先端化学材料を用いた製品に至るまでのトータルなライフサイクルに亘り,グリーンイノベーションを牽引する役割を期待されている。
 具体的には,革新的触媒プロジェクトなどの未来開拓研究開発,バイオマス原料を活用したナフサ原料からの転換技術開発,石油化学品等の革新的製造プロセス基盤の開発,次世代印刷エレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発などに取り組むことになっている。また,次世代化学材料の評価拠点を整備し,共通的な性能評価手法を確立することで,すり合わせ時間の短縮や開発コストの大幅な低減等をめざす取り組みも推進することとしている。

◆中国地域の関わりと今後の期待
 
中国地域においても経済産業省の施策として,企業,大学が連携し,産学官連携による化学分野の研究開発プロジェクトを実施中であり,大学のシーズと企業のニーズのマッチングによる研究成果の実用化,産業化に期待している。

<基調講演A>企業における産学官連携の取り組みの現状と今後への期待
  (講師)宇部興産(株) 研究開発本部 企画管理部 研究推進グループ グループリーダー  柏木 公一 氏

◆宇部興産の産学連携
 従来,当社は自前主義の研究開発により数多くの事業や製品を生み出してきたが,グローバル競争の激化,技術の高度化・複雑化などの状況変化により,近年は自社単独の研究開発も継続しつつ,オープンイノベーションの推進にも力を入れている。

◆化学企業が抱える課題と大学への期待
 当社を含め現状の日本の化学企業は,既存事業の成熟化,新規事業が出てこない,技術の拡散,産業空洞化の懸念などの課題を抱えている。
 こうした課題克服のために新技術の開発が必要であるが,企業が自前で手を付け難い領域があり,企業は開発リスク低減,開発スピード向上・効率化,未保有技術の短期開発などの点で大学に期待をしている。企業と大学はそれぞれのミッションを踏まえた上でWin-Winの関係になるように連携してイノベーションを創出し,新規事業の創出と既存事業の競争力強化を図っていくことが必要である。
 今回の中国地方5大学のシーズ情報からもイノベーションが創出され中国地方の産業の活性化に結び付くことを期待している。

<大学からの研究シーズ紹介>

@「超臨界二酸化炭素を用いたポリマーの発泡と微粒化」
   
広島大学 工学研究院 教授  滝嶌 繁樹
A「低炭素社会を先導する革新的触媒技術開発」
   
岡山大学 自然科学研究科 講師  押木 俊之
B「有機−無機複合材料の合成と医用への応用」
   
岡山大学 自然科学研究科 教授  尾坂 明義
C「生分解性高分子の高性能化」
   
岡山大学 環境生命科学研究科 准教授  山崎 慎一
D「高分子反応を用いた高分子の機能化」
   
広島大学 工学研究院 准教授  飯澤 孝司

  
(左:会場の様子,右:主査の木村教授)

 以上5件のシーズ紹介を踏まえて,今回の「化学分野における大学研究シーズ説明会」の主査をお願いしている岡山大学環境生命科学研究科 木村邦生教授から,「本日のシーズ紹介は正に基調講演でお話のあったグリーンイノベーション,未来開拓研究に関するもので,大学への期待にお応えする内容のものであったように思う。ここから一つでも多くの共同研究につながっていくことを期待したい。」という締めくくりのコメントをいただいて,第1回の「シーズ説明会」を終了しました。
 なお,本シーズ説明会は全5回のシリーズで開催し,今回を含めて合計40件の大学研究シーズを紹介していく予定です。

(中国経済連合会 小泉)